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農業教育は素晴らしい
農業高校の教員になって思うことは農業高校の教育力の高さです。別に普通科がダメとか農業高校の方が優れているという話ではないですよ。
私自身は都内の普通科高校卒業であり、農業高校とは全く無縁でした。むしろ農業高校の存在すら知りませんでした。
しかし、今こうして農業高校の教師として働いてみると、本当に農業高校って凄い!って思います。
①アクティブラーニング(主体的対話的で深い学び) が当たり前
農業高校には課題研究と呼ばれている科目があります。
文部科学省が設定する課題研究の目標(学習指導要領による)は「農業に関する課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。」
これこそがアクティブラーニングだと思います。
アクティブラーニング は学習指導要領の改訂案では「主体的対話的で深い学び」に置き換えられています。
課題研究は自らが主体的に課題を設定し、グループ内でどのように課題を解決するかを話し合いながら(対話的)学んでいきます。
そのため、教員が行うことは基本的には「場」作り、課題を設定しやすいようなヒントを散りばめることでしょうか。
もちろん質問されたら答えますが、基本的には自分たちで話し合いながら答えを模索していきます。
自分たちが調べたいこと、解決したいことを研究していくので生徒の意欲も高いです。
やはり、「好きこそ物の上手なれ」勉強は強いられるものではなく、自発的に行うものなのだとつくづく思います。
このような課題解決型の授業を通常の座学に応用できないかを模索しています。
自らが考え、発表する程度であれば、KJ法を使ったりもしますが、課題研究のように、よりアクティブにできるような授業を構築したいと思っています。
前の記事でも書きましたが、現在は知識構成型ジグソー法を利用してアクティブラーニング を行なっています。
ただ、ジグソー法ではエキスパート活動の際になかなか話し合いに参加できない生徒もいたので、エキスパート活動に分かれた後で、さらにスーパーエキスパート活動(仮称)としてエキスパート活動で使用する資料をさらに細かくしたものを作成しました。
エキスパート活動の資料を解く鍵(キー)を一人ひとりがエキスパート活動内で話し合う仕組みにしています。
まあ、これが良いのかどうかは分かりませんが、本校には合っていると思います。なんせ東京大学が作った仕組みに手を加えているのですから、良い手法とは言えませんね。
けれど、それぞれの学校の実態にあった手法を模索することも大切だと思うので紹介させていただきました。
②大学並みの研究内容
私が本当に驚いたのは、高校生が取り組んでいる研究のレベルの高さと地域貢献度です。
地域の課題を見つけ、それを解決するためにどうするのかを考えて研究を行う場合が多いのです。
そしてその研究を発表する大会があり、昨年度は全国大会を見る機会がありました。その研究をいくつか紹介できればと思います。
青森県立五所川原高校
米生産農家が多い地域であるため、より良い生産方法の確立を目指し、稲作生産の栽培技術の比較栽培実験を行なっていました。
その比較栽培試験を行っている中で次の課題を発見し、GGAP(グローバルギャップ)の認証取得に取り掛かります。
※グローバルギャップは国際認証であり、オリンピックなどで使用される農作物はこの基準に通っている必要があります。国産品は安心安全といっても、第三者によってそれを証明しないといけないわけです。
全国の農業高校で初めてGGAP(グローバルギャップ)を取得し、公開審査の実施により、地域内の農業者はもとより、県内外の農業者や農業高校の関係者、行政関係者等へも大きな波及効果あり、平成29年度だけで全国から延べ340人が見学に来訪している。
また、GGAPのような国際認証を取得したことにより、その生産物の安全性が認められ、様々な場面で活用出来るようにしている。
また、ANAの国際線ファーストクラス用に「米」を提供するようにもなっています。これもGGAPを取得したからこそだと思います。
北海道岩見沢農業高校
「リン酸減肥の可能性を探る研究」
北海道は皆さんもご存じ、タマネギ生産日本一の生産地です。しかし、タマネギを栽培する際にリン酸を多く使用していることを問題視し、リン酸を減らしても収量が落ちないことを比較栽培試験に証明し、リン酸減肥栽培を道内に普及させる活動を行っていた。
リン酸の使用を抑えて栽培する事は、コストの削減になるだけでなく、環境への負荷も軽減させることができるのでまさに一石二鳥です。
北海道全体への波及効果が期待され、高校生の活動が北海道の経済活動に影響を与えることになり、非常に素晴らしい取り組みだと思います。
伊予農業高等学校
「ドローンを活用した近赤外画像撮影による水稲栽培の生育状況の把握」
従来は葉緑素計によってサンプルの生育を測り、水田全体の生育調査をするしかなかったが、GPSとドローンを組み合わせることにより水田全体の水稲栽培の生育状況がデジタルデータによる科学的根拠に基づいて把握している。
また、RGBカメラと近赤外カメラの違いも理解しており、デジタルカメラやデジタル計測機器を用いたデジタル写真撮影やデータ処理能力がを身に付けています。
また、「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則式による水稲の自然栽培も実践しており、この学校も非常にレベルが高い研究をしています。これって本当にすごくないですか!?
いかがでしたか?他にも凄い研究をしている高校は多くあります。
害獣をどのように利用するか、特産品を100%使い、無駄なく活用するにはどうするか、伝統工芸品を現代風にアレンジする等々。
本当に様々な課題に取り組んでそこから多くを学んでいます。
私が高校生の時は地域をよりよくしよう!など全く考えておらず、ただ単に、みんなが大学に行くから大学に行こう。
なんとなく農業が面白そうだから農大に行こう!って考えていただけなので、この違いは凄まじい。
まとめ 農業高校は・・・
- アクティブラーニングが主となっている授業で主体性が身につきやすい
大学並の研究内容を地域の課題と絡めて行なうレベルの高い授業を実施している生きる力が身に付く - 農業高校は農業の授業を通じて「生きる力」が身に付きやすい環境にあります。生き物を扱う授業が多いからこそそのような能力が身に付くのだと思います。
- また、一人ではなく、友達と協力しながら実習を行うことも多いのでコミュニケーション能力も身に付きやすいです。
農業高校で学んだことを将来活かせる場は農業分野だけではなく、様々な場面、分野で活かせるはずです。
農業高校の教育力
農業が教えてくれることの多さに気づかされます。
進学先を悩んでいる中学生、農業高校はいかがですか?
進学先を悩んでいる高校生、農業系大学はいかがですか?
土を耕すだけでなく、自らの心も耕しましょう!